The discretion of a man deferreth his anger

; and it is his glory to pass over a transgression (Prov. 19:11 KJV) - このブログは基本的に画像処理やRTMなど技術に関することを書き連ねていきます。

レベルの設定と陳腐化

自分の母校ではないが地元の高校である遠軽郁凌高等学校が閉校式を行ったらしい。
もう何年も前に決定して、最後の学生を卒業させての閉校なので、割と今更感はたっぷりあるのだが、それでも地元の高校が母校である遠軽高等学校1校のみとなるのは少し寂しい(湧別高校もあるが、同学区であれ別な町なので、遠軽町では1校ということになる)。
遠軽郁凌高等学校は、歴史的には遠軽家政高等学校として、昭和30年に開校。母がここの高校出であって、平成2年に現在の遠軽郁凌高等学校として、名称・科目が変更になるまで、女子高、家政科として多くの人材を輩出してきた。また、平成2年以降も、情報ビジネス科という、全く新しい分野の科目を設定し、創立以来実に54年の業績を残したということになります。
しかしながら、何故ここで閉校となったのか。と言う点には、最も大きい理由としては地域の学生数の減少が挙げられるものの、如何せん『情報ビジネス科』という科目の設定自身にも多少問題があったような気もしないでもありません。
情報ビジネス科とすると、実際には商業科であります。これを情報ビジネス科と名づけたからには理由があり、本来であれば高度情報基盤を操作する情報技術者、及びシステムアドミニストレーター、または事務系における情報技術担当者としてなる人材を高校のうちから育成することが目的となります。もちろん、その科目において、必要な学習量については色々とあるのですが、しかしながら少なからずともそういった人材がしっかり育ったのかと言うと、多少疑問となる点があると言う事も事実です。
まず、学力の固定化が成されていたか。地元の高校群として、遠軽高校遠軽郁凌高校、湧別高校の3校は、いずれも学力としては全国平均から程遠い、レベルの低い学校であります。しかし、遠軽高校については、部活動は全国トップクラスの吹奏楽をはじめ、北海道の上位に食い込むことのできる野球、ラグビー、スキー、弓道を中心に、全部活が凌ぎを削っている、どちらかと言うと“武”の方が強い高校となっています。さらには、地域的には3校の中で一応『進学校』を謳っているわけで、国公立大進学数は少ないものの、専門学校まで含めればとりあえずは進学率50〜60%はある学校であります。湧別高校は、やはり地域高校として活動しているため、とりためて進学が多いという訳ではないですがそれでも進学率30%はあるものと思います。
郁凌高校は、実際には進学する人も居るのだとは思うのですが、殆どが町内の就職となります。これはこれで町内の人材確保のためにはいいんですが、学力をどれだけ得ているかと言うとやはり全国はおろか、網走管内の別な市に対してアプローチしていくだけの能力も得られているのかという、ちょっと厄介な状態でもあります(その証拠に、数学は情報ビジネス科なのに、数I,A,IIまで行けばいいくらいだという話を聞いています。)情報ビジネス、つまり、高度情報を扱うための人材として、科目を開いたのに、商業科同然か、中途半端な分、商業科よりも学問を体系化できたのかというとはなはだ疑問なわけです。
と、ここまでは実情を見てきましたが、実際にはこのレベルの設定と言うのが問題があるのではと思います。この情報ビジネス科、何気に全国に一杯あるんですね。遠野高校(岩手)、三島高校(静岡)、長岡高校(新潟)などなど。しかし、どこの高校も標榜しているのはITに対する人材育成。特にプログラムなどは上位に来ている。しかし、郁凌高校でプログラムの話はあまり聞かない。何をやっているかと言うと、どちらかと言うとWordやExcel等の扱いの話。レベルの設定にかなり難があったのではと思うわけです。しかし、それも、北海道の東の端の方にある、全く外からの流入の無い、町立の高校で、しかも地域ポータルとなっている遠軽高校に水をあけられた、『遠軽高校に入れない人間が入る高校』とまでレッテルを貼られてしまった高校が出来たか?というと、正直微妙なところでもあると。何が言いたいのかと言うと、経営的に『魅力が無かったのでは?』ということなのではないかと思ってしまうわけです。経営的に、学科的に魅力があれば、普通科と情報システム科の違いがあるので、中学生の夢に応じて選択可能だと思うのですが、そうではなかったということだと。
もう一つは、陳腐化の問題があった可能性があると言うことですね。これは会津大もよく見ていかなければいけないところ。情報工学は、今でこそポピュラーとなりましたが、至極新しい分野。つまり、24時間365日、動的に変化し続ける分野であるわけです。当然、その中で、知識のある人間が、さらなる知識を得ていかなければならない分野だったということです。いわば、高校に居ながら、先生は常に研究や調査を続けなければいけない分野の科目だったわけですが、しかしながら実情は一般の普通科と同様に進めて行った印象があり、知識の陳腐化を招いた。ということになると思います。時代に追いつけなくなったら、こういった科目はもう運営していけない状態となってしまうわけです。
まぁ、色々な顛末があったにせよ、地元の高校が一つ無くなったというのは寂しいことです。54年間の働き、本当にお疲れ様でした。

追記:遠野高校の情報ビジネス科も来年閉校なんですね(汗。やっぱりもう流行らないのかな・・・重要なテーマなのに。