The discretion of a man deferreth his anger

; and it is his glory to pass over a transgression (Prov. 19:11 KJV) - このブログは基本的に画像処理やRTMなど技術に関することを書き連ねていきます。

Cloud Roboticsを考える

皆さんおはようございます。矢口です。

新年度明けて、2発ほど割としっかりとドローンの話題を張り付けてきましたが、今日は少し別の話題を。

会津大学では2015年4月より、先端情報科学研究センター(CAIST)という括りの中で、ロボットクラスターを立ち上げて、ロボットを用いた情報科学分野からの研究アプローチを展開しています。

ロボットと言っても、最近のロボットは実は殆どソフトウエアと言っても過言ではありませんね。ロボットのボディ、駆動部やセンサー、コンピュータボードなどをハードウエアとして構築した後、それぞれの駆動部がどのように動くのか、センサーからの情報をどのように処理して駆動部の動作計画に生かすのかなど、ロボットの『脳で考える部分』はほぼすべてソフトウエアで構築されるべきものであります。(一部、反射等は、ハードウエア的に扱われる可能性があります。安全などのために。)

そして、最近流行りのキーワードとしてInternet of Things (IoT)なんてのもありますね。日本語では『モノのインターネット』と言いますが、これはセンサーと据え置き型のモノ(エアコンや冷蔵庫等)を組み合わせて、センサーから入る外部情報をそれぞれのモノの動作の予測に使う、というのが基本的なイメージです。

何故こんなにこの辺りのテクノロジーが進んでいるかというと、MEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれるテクノロジーで、センサー類がワンチップで収まるようになったからです。正味1cm四方もない、薄いチップにセンサーが収まると、電力消費も少なく、簡単にセンシング出来たりするので、安価に大量生産されれば、あとはネットにつないでばらまいてしまえばいい、ということになるわけです。この辺りは、Drone技術の発展の一つである、IMUやGPS、気圧高度計等のセンサーの小型化でもおなじみかと思います。

当然ながら、ロボットは、そういう意味では『動くセンサーの塊』でもあるわけなので、それをインターネットで繋げば、同じように『Internet of Robots(IoR)』になってくれるわけです。理論上は。問題点は後日いろいろと書きたいと思います。

そして、そのIoRを簡単に実現できるようになるには、開発者が手元にロボットがあったとして、そのロボットのAPIとかをわざわざ自分のPCに全部入れて、データベースをインストールして繋いで…なんていうことは非常に面倒くさいことになります。ですから、Platform as a Service (PaaS)みたいなものをRobot用に作った『Robot as a Service (Raas)』があれば、Web上でコンソールを立ち上げ、自分のマシンと接続して、Webを介して全部開発できるようになる、という考えです。

データベースのデータを共有するとどうでしょうか?例えば、非常に大きいサイズの6自由度(6個関節がある)ロボットアームは、やはり非常に高価であり(億単位!)、持ってる人しか機械学習等を用いて動作計画をできないわけです。その動作データをOpenにされなければ、または、同じような機構で小さなアームの制御を、データ取りからやらなければいけないのは非常に大変です。こういったデータを、クラウド上のデータベースに蓄積し、その意味合い(Semantics)や機能(Function)をベースに紐づけて(幾許かの値段で)取り出せるようにすれば、もうほかの人がやった作業、知識、知恵を再利用できるわけです。これが『Wisdom of Crowds (WoC)』です。

とまあ、Cloud Roboticsを私が考えると、どうやら3つのパートで構成されているようです。通信・相互接続性に関するIoR、環境、サービスに関するRaaS、知識・情報共有に関するWoCの3つが組み合わされれば、非常に有機的なロボット開発が行われる、ということで、これからこれを、色々なシーンのシナリオ(農業、林業、土木、医療、災害救助など)、でどうデザインされるのかを考えながら、少しずつ研究していきたいと思っています。